第3章 おはぎと抹茶
「あの、では始めさせてもらいますね」
借りてきた猫のようにおとなしくなって、しのぶにされるがままになっている咲に一応断りを入れてから、アオイは彼女の隊服の裾に手をかけた。
そっと裾をめくると、先ほども見えた痛々しい足が現れる。
その断面に、傷跡とは違う圧迫されたような赤みがあることにアオイは気がついた。
「これは……もしかして、義足が当たってしまっているのではないですか?」
ただでさえ痛々しいのに、それがこんな状態になっているのは見るに堪えなかった。
「はい、……でも、やっぱり足じゃないところに木を当てている訳なので、仕方がないのかな……と。歩く時には体重もかかりますし」
「そんな……でも痛いでしょう?」
怒っている訳ではないのだが、アオイがいつものクセで眉を寄せて言うと、咲はちょっと困ったようにコクンと頷いた。
その仕草が、なぜか無性に健気に感じられた。
咲がまだ幼く体が小さいせいもあるのだが、それ以上に、その表情に無性に心を打たれたのだ。