第22章 番外編 其の参
たくさんの孫と弟子達に囲まれて、杏寿郎と咲の日々は穏やかに幸福に過ぎていった。
そして桜寿郎の第一子・真寿郎は15歳を迎えると、易々と最終選別を突破して鬼殺隊に入隊したのだった。
真寿郎は正式に現・炎柱である桜寿郎の継子となり、さらなる鍛錬と鬼殺任務に励むこととなった。
真寿郎が鬼殺隊に入隊して少し落ち着いた頃、桜寿郎と真寿郎、妹の火弥(かや)が連れ立って本宅に遊びに来た。
「火弥、俺の手ぬぐいがどこにいったか知らないか?」
懐や袂にゴソゴソと手を突っ込んで首を傾げている真寿郎に、火弥が呆れたような顔をして綺麗に折りたたまれた手ぬぐいを差し出す。
「手ぬぐいは兄上が先ほど落とされたので私がここに。…って、あっ!?そんな事よりも兄上!!お着物が裏表逆でございますよ!!」
「なんと!」
どうりでいつもと着心地が違うと思ったのだ!と真寿郎が無邪気な笑い声を上げている横で、父親の桜寿郎は額に手を当てて顔を振っていた。
「ち、父上、お騒がせして申し訳ありません…」
「うむ!桜寿郎よ、真寿郎は相変わらずのようだな!」
恥ずかしそうに謝ってくる息子に、杏寿郎はむしろ愉快そうに「ははは」と笑い声を上げた。
「は、はい。お恥ずかしながら、あいつはやや…いえ、ハッキリ言ってアホの子です」
「むう!まぁ少し、天真爛漫が過ぎるところはあるな!」
桜寿郎の言う通り、真寿郎にはやや抜けているところがあった。
先ほどのように、些細な持ち物をすぐに無くしてしまったり、童でもないのに身だしなみが整っていなかったりすることがある。
そんな兄を持った火弥は、まだ12歳だというのに随分としっかりとした面倒見の良い娘に育っていた。
そして火弥の気が回るようになればなるほど、真寿郎のマヌケも一向に改善しないままなのだった。