第22章 番外編 其の参
その後、清一郎は所用で呼ばれたため恐縮しながらも一時席を外し、杏寿郎は はじめ達に腕を引かれて庭へと出て行った。
咲と火凛は縁側に腰掛けて、杏寿郎とはじめ達が庭で駆け回って遊んでいる姿を眺めていた。
「相変わらず父上は、おいくつになってもお元気ですね」
「ふふ、そうね。でもあなた達のおじい様も、同じくらいのお年の頃はまだまだお元気でしたよ」
「確かにそうでした。兄上にビシバシと稽古をつけられていたのを、よく覚えています」
二人は在りし日の槇寿郎の姿を思って、顔を見合わせて微笑む。
その時、布団に寝かせていた葉治が「ふぇ、ふゃ」と子猫のような泣き声を上げ始めた。
「あらら、目が覚めたのね」
本格的に泣き始める前にと、慌てて火凛が抱き上げてあやしはじめる。
その姿は柔らかな陽の光の中にあって、まるで美しい絵のように咲の目にキラキラと輝いて映った。
ジーンと目の奥が熱くなってきて、咲は思わず涙ぐむ。
(昔、桜寿郎を抱いている私を見て不死川さんが泣いてしまったことがあった。…あの時の不死川さんの気持ちが、今ハッキリと理解できた)
咲は火凛に気づかれないよう、そっと目元の涙を拭ったのだった。