第22章 番外編 其の参
そんな風にして杏寿郎夫婦が少年達を育てている間に、火凛夫婦のもとに第三子・初めての女の子となる朝顔(あさがお)が生まれた。
そしてその3年後には第四子となる葉治(ようじ)が生まれたのだった。
孫が生まれるごとに杏寿郎夫妻は祝い品を持って藤の家紋の家に挨拶に行っており、葉治が生まれた際にもこれまでと同様に夫婦揃って訪問したのだった。
「杏寿郎おじいさまーっ!!咲おばあさまーっ!!」
二人が玄関に立つやいなや、家の奥から子ども達が飛び出してきた。
火凛夫婦の子、6歳の はじめ、5歳の理(おさむ)、そして3歳になった朝顔(あさがお)である。
「うむ!よしよし!皆息災のようだな!!」
杏寿郎がしゃがみ込み、ニコニコしながら子ども達の頭を撫でる。
「えっ、はくさい…?」
キョトンとした顔をする子ども達に、杏寿郎は愉快そうに笑った。
「そくさい、だ!!皆が元気で病気もしていない、という意味だ!!」
「うん!!僕達元気だよ!!」
合点のいった子ども達も、パアッと再び笑顔を浮かべて大きな声で言う。
「それは良かった!!俺達も嬉しいぞ!!」
そこへ、生まれたばかりの赤子を抱いた火凛と夫の清一郎がやって来た。
「父上、母上!遠いところをわざわざ来てくだってありがとうございます」
「お父上様、お母上様、お疲れでございましょう。さぁ、どうぞお上がりになってくださいませ」
清一郎に促されワラジを脱いだ二人は、いつも通されている日当たりの良い客間へと案内されたのだった。
「父上、葉治でございます。どうぞ抱いてやってくださいませ」
淡いヨモギ色に染め抜かれたおくるみに包まれている葉治を火凛の腕から受け取り、杏寿郎は体を揺らす。
「おぉ、よしよし!お前は清一郎殿によく似ておるな!!」
ぱっちりとした目を大きく開き、不思議そうに杏寿郎と咲の顔を見上げている赤子に、二人はニコニコと笑みを浮かべた。