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【鬼滅の刃/煉獄】冬来たりなば春遠からじ

第22章  番外編 其の参



その後、真寿郎が素振り千回を終える頃になって他の弟子達が走り込みから戻ってきた。

皆疲弊しきった顔をして、足取りもヘロヘロになっている。

そんな彼らの様子を見回して杏寿郎は満足そうに頷くと、

「うむ!皆よく頑張ったな!ではそろそろ昼飯にしよう!」

と声を上げた。

そこで咲は、用意しておいた麦茶や握り飯、菓子などを出してやったのだった。

杏寿郎の指導は非常に厳しい。

下手をすれば逃亡者が出てしまうほどに。

その厳しさは現役時代からずっと変わらないことだが、当時の弟子達は咲と甘露寺を除けば全て血縁者であったため、同じ血の成せる技とでも言うのか、杏寿郎の熱血指導にも耐え抜くことができた。

だが通常の少年達にはいささかキツすぎる内容である。

それでもそんな苛烈な指導の中で脱落者が出なかったのは、ひとえに咲の優しさのおかげと言えた。

まず何よりも見た目が美しく、そこにいてくれるだけで心が和む。

その上、料理も上手く、性格も温厚でとても優しい。

杏寿郎の元で修行をしている少年達は、仔細こそ違えど皆鬼に身内や大切な人を奪われている。

中には天涯孤独になってしまった者もおり、そんな少年達にとって包み込むような優しさで接してくれる咲は、まさに母のような存在であった。

毎日毎日、血反吐を吐くほどにしごかれ、夜には全ての力を使い果たしてぐったりとなってしまう生活の中で、咲の用意してくれる料理がどれほど少年達に活力を与えていたかは計り知れない。

また、その食事の席において、咲もかつては杏寿郎の弟子としてあの地獄の訓練に耐えていたのだということが知れると、少年達は驚愕と共にますます咲への敬慕の念を深めたのだった。

きっと咲がいなかったら、杏寿郎の弟子達は一人も残らなかったに違いない。

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