第22章 番外編 其の参
そんな杏寿郎のことが可愛くて愛しくて、咲も杏寿郎の体をぎゅっと抱きしめた時、足元から元気いっぱいの声が上がった。
「ただいま戻りました!!」
「ぬおっ!!真寿郎!!は、走り込みはどうしたのだ、忘れ物かっ?!」
杏寿郎と咲は二人して飛び上がり、杏寿郎がどもりながらも問いかけた。
「いえ!おじい様から申し付けられた分はもう走り終えましたので、戻ってまいりました!!」
「なにっ、もう終わったのか!!」
さすがに驚いた顔をする杏寿郎。
そんな杏寿郎と、その腕の中にまだ収まっていた咲の姿を真寿郎はまじまじと見上げてくる。
「おじい様とおばあ様は仲良しなのですね!!」
そう言ってニカッと笑った顔に、咲達は数年前の出来事を思い出した。
そう言えばこの子の父親の桜寿郎にも、こんなふうに目撃されたことがあったと。
それを思ったら二人は急に可笑しくなってきて、恥ずかしさも吹き飛んでしまった。
「うむ!!俺と咲はずっと仲良しなのだ!!真寿郎、お前にもいつか自分の全てを捧げて愛したいと思う女性がきっと現れる!!その時はお前もこうして、その人のことをしっかりと抱きしめてやるのだぞ!!」
杏寿郎の明るい声に、真寿郎はその顔いっぱいに無邪気な笑顔を浮かべながら、
「はい!!」
と元気よく返事をしたのだった。