第22章 番外編 其の参
45歳になった時、杏寿郎は炎柱を引退した。
継子として長年稽古をつけてきた桜寿郎が立派に成長し、技術的にも経験的にも、もういつからでも炎柱としてやっていける実力を身につけたと判断したからだ。
それに、杏寿郎は年齢の割には若々しい肉体を保っているとは言え、やはり寄る年波には勝てない。
任務で体力の限界を感じる前に、
「次の代に繋ぐ」
と言って、潔く引退したのだった。
次期炎柱には、すぐさま息子の桜寿郎が就任した。
それに伴い、弟子となっていた靑寿郎への指導は桜寿郎に引き継がれたのだった。
靑寿郎はまだ鬼殺隊には入隊していなかったが、来年には藤襲山での選別に参加することになっている。
靑寿郎もまた桜寿郎と同様に父親から忠実に剣の才能を受け継いでおり、生まれつきの視力の弱さなど感じさせない力強い剣を振るう少年に育っていた。
次に柱となるべき隊士を立派に育て上げた上、五体満足のまま引退できる柱はほとんどいない。
ゆえに杏寿郎は、もともとその人柄と実力で隊士達から絶大な人気があったのだが、柱を引退することによってさらに憧憬の念を集めたのだった。
柱を引退後、杏寿郎は育手となった。
そのため、火凛が嫁ぎ槇寿郎が亡くなったことで杏寿郎と咲、靑寿郎の三人暮らしになっていた煉獄家本宅は、弟子の少年達で賑わうこととなったのだった。
煉獄家は広いので、空き部屋となっていた部屋に弟子達を寝泊まりさせているのだ。
そうして杏寿郎が今度は育手の役目に情熱を燃やしている内に、火凛夫妻のもとに第二子となる男の子・理(おさむ)が生まれ、靑寿郎が無事に選別を突破して鬼殺隊に入隊したのだった。