第3章 おはぎと抹茶
「アオイさん!先ほどは本当にありがとうございました!」
そう言って彼女が目元をへにゃりと細めると、同時に顔に当てた布がモゴモゴと動いた。
「私は隠の兎田谷蔵 咲と申します」
咲は顔布を外した。
果たしてその下には、アオイがその声から想像していた通りの可愛いらしい少女の顔があったのだった。
「最近、たまに外れてしまうことがあるのです」
咲がバツの悪そうに小声で白状すると、いつのまにか彼女の隣に腰掛けていたしのぶが少し頬を膨らませた。
「咲、なぜそれを言わないのです。今回はたまたまアオイがいたから良かったものの、任務中に外れて怪我でもしてみなさい。大変なことになってしまいますよ」
「はい……申し訳ありません、しのぶさん」
シュンと肩を落として反省する咲に、しのぶはパッと表情を変えた。
「よろしい。咲は素直ですね。よしよし」
そう言ってしのぶは見惚れてしまうような美しい笑顔を浮かべながら、咲の頭を撫で回すのだった。