第22章 番外編 其の参
その後、杏寿郎を喪主としてしめやかに葬儀が執り行われたのだった。
すでに炎柱を引退し鬼殺隊を辞めていたとは言え、その功績は大きく、また地元の名家でもある煉獄家当主の訃報に、各地から数多くの弔問客が訪れた。
その中には、長年に渡って槇寿郎を敬愛してきた不死川の姿や、家族ぐるみで付き合い「旦那!」と気さくに酒を酌み交わしていた宇髄の姿もあった。もちろん、現・鬼殺隊当主の姿も。
鬼殺隊からも多くの隊士達が集まり、その葬儀はまれに見るほどの大きなものとなったのだった。
その光景に、子どもである杏寿郎達はもちろんのこと、孫、ひ孫に至るまで、槇寿郎の偉大さを改めて思い知ったのであった。
葬儀が終わり、喪主としてあちこちへの挨拶やら弔問客への対応やらで奔走していた杏寿郎は、さすがに疲れて家族が寝静まった後一人縁側に座っていた。
ふぅ、と吐く息が白い。
着物の裾から入り込んでくる冷気に体温が奪われていくような気がする。
だがキィンと凍った空気で澄み渡ったように広がる星空を見上げていると、何故か心が落ち着いた。
「杏寿郎さん」
キシと廊下が微かに鳴り、腕に半纏を抱えた咲がいつの間にか廊下の角に立っていた。
咲は歩いてくると、腕に持っていた半纏を杏寿郎の体をくるむようにかけて、その隣に腰を下ろした。
「ありがとう、咲」
半纏に腕を通しながらにっこりと微笑んで礼を言う杏寿郎に、咲は見上げるように小首をかしげて微笑んだ。