第22章 番外編 其の参
「す、すまぬっ!!咲!!俺が愚かであった!!」
「もっ、申し訳ありません母上っ、俺が悪うございましたっ!!」
揃って下げられた焔色の頭を見下ろしながら、咲は言葉を続ける。
「謝る相手は私ではありません。そして言葉ではなく、行動で示してください。煉獄家の男たるもの、大切な家族の門出を気持ち良く祝えなくてどうしますかっ!!」
「は…、ははっ!!」
怒髪天を衝くような咲の大喝に、もはや杏寿郎と桜寿郎の尻子玉は抜かれたも同然であった。
恐縮しきりで咲に頭を下げて縮こまっている二人。
鬼殺隊の隊士達が見たら唖然とするような光景であろう。
そこへ、ふすまを細く開けて槇寿郎が顔を覗かせた。
「…大きな声がしたようだが、何かあったのか?」
ふすまの隙間からチラリと見えるその腕には風呂敷やら小箱やらがたくさん抱えられていて、町で様々な物を買い込んできたことが分かる。
全て、嫁いでいく火凛のための祝い品である。
その姿を見た杏寿郎と桜寿郎は、「寂しい」などと言って勝手に落ち込み、幸せの絶頂であるべき花嫁の気を揉ませてしまった自分達の行動を心の底から反省したのだった。
「本当にすまないことをしてしまった…。よし、俺もこれからは心を入れ替え、全力で祝うぞっ!!」
「俺もっ、兄として出来ること全てやってやろうと思いますっ!!」
そう言って杏寿郎と桜寿郎は、ぐっ、と拳を突き上げたのだった。
一方の槇寿郎は、普段は春の日だまりのようにほんわかとして夫や家族を支えてくれている咲が憤怒の形相で上座に座っており、息子と孫はその下座で頭を垂れて蹲っており、そうかと思いきや突然気合いの雄叫びを上げ始める姿を見て、「本当に、一体何ごとだ?」と唖然としたのだった。