第3章 おはぎと抹茶
ただでさえこの年頃の少女が足を人前に晒すというのは恥ずかしいものだ。
それをこの様な傷を負った足を、いつ人が来るとも知れない場所でむき出しにするのはあまりにも可哀想だと思った。
「ここではアレですから、場所を変えましょう」
そう言ってアオイは再び彼女を背負うと、ついさっき彼女が出て来たしのぶの診察室のドアをノックした。
「失礼します」
室内にはまだしのぶの姿があり、アオイに背負われている彼女を見て驚いたように立ち上がった。
「咲!どうしたのですか!?」
普段滅多なことでは動じないしのぶの慌てぶりに、アオイは少し面食らう。
「義足が外れてしまったようなのです。それで付け直すためお部屋をお借りしてもよろしいでしょうか?」
「えぇ、えぇ、それはもちろん構いません。それより咲、怪我はありませんか?」
アオイが診察台に咲を下ろす間も、しのぶは横から心配そうに声をかけている。
「しのぶさん、申し訳ありません。義足の固定が甘かったようで…。先ほど階段から落ちそうになったところを、この方に助けていただいたのです。えっと……」
大きな瞳で見上げられてアオイは何故か少しこそばゆさを感じ、それを隠すように端的に言った。
「アオイです。神崎アオイと申します」