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【鬼滅の刃/煉獄】冬来たりなば春遠からじ

第22章  番外編 其の参



杏寿郎夫妻の第二子・長女である火凛はその3年後に、18歳で結婚した。

火凛は、咲そっくりの容姿を持った明るく素直な性格をした娘である。

杏寿郎の血が入ったおかげか、ほんわかとしている咲と比べるとそこまで大人しくはなく、まさに杏寿郎と咲の良いところをかけ合わせたような子であった。

その火凛の相手となるのは、杏寿郎や桜寿郎がよくお世話になっている藤の花の家紋の家の跡取り息子である。

杏寿郎や桜寿郎が怪我の療養や休息のために滞在している時などに、火凛は衣類や差し入れを届けるために何度もその家を訪れており、その時に二言三言と言葉を交わす内にお互いに惹かれていったという。

その青年の名は清一郎。

誠実さが伝わってくるような何とも清々しい名前である。

そしてそれは名前だけでなく、実際その青年の人柄はすこぶる良かった。

優しく、賢く、細やかなところにもよく気が付く。

基本的にはおっとりと穏やかなのだが、今後家長として家を背負って立っていくのだという強い責任感と、やるべき時には果断として行うという潔さも持ち合わせていた。

まさに非の打ち所のない、滅多にいないような良い男なのである。

杏寿郎も桜寿郎もその青年のことは当然知っており、その仕事ぶりを好ましく思っていたから結婚に反対する理由などはこれっぽっちも無かった。

だが…やはりそこはそう単純なものでもない。

結婚にはもちろん否やもなく賛成だったが、やはり…可愛い娘・妹を手放したくなくて、二人はむうううと葛藤した。

咲と火凛が自宅で祝言の準備についてキャッキャと楽しそうに話している横で、杏寿郎と桜寿郎はチビチビと酒を舐めながら「はぁ~ぁ~」と、このハツラツとした太陽のような男達が今までに上げたことのないようなため息をついたりしていた。

決して結婚を喜んでいない訳ではない。

この上なくめでたく、喜ばしいことだと思っている。

だが、何というかそう、単純に寂しかったのだ。

咲によく似た、まさに今が花の盛りのように美しく輝いているこの宝物をどこにもやりたくなかったのだ。

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