第22章 番外編 其の参
「む…そうだな。だが千寿郎、困った時はいつでも我らを頼るのだぞ。お前は立派な男になった。だが俺は、お前のことが可愛くて仕方ないのだ」
「兄上…ありがとうございます」
ゆらりと千寿郎の赤い瞳が揺れる。
槇寿郎は懐手をして、くるりと背を向ける。
「…いつでも帰ってこい。お前には炎柱の書の整理でまだまだやってもらわねばならぬことがたくさんあるのだ」
「はい、父上」
「千寿郎叔父様、また俺に稽古をつけてくださいね」
「おじさま、火凛とまた遊んでね」
「うん、うん。二人共、またすぐに来るから。…だからそんなに泣くんじゃない」
いつの間にか桜寿郎と火凛の頬にはいく筋もの涙が流れていた。
杏寿郎と槇寿郎が年甲斐も無く駄々をこねている間、その小さな胸の内で必死に寂しさに耐えていたのだろう。
ぎゅうっと千寿郎に包み込まれるように抱きしめられて、二人はついに我慢の限界を超えたのか、わんわんと泣き始めてしまった。
その光景に、咲の目にもいつの間にか涙が浮かんでいたのだった。