第3章 おはぎと抹茶
コツン、コツン、コツンッ、と木製の階段を鳴らしながら何かが転がり落ちていく音が聞こえる。
「……大丈夫ですか?」
「は、はい」
腕の中の彼女を見下ろすと、顔を覆っている布の間からは、今にもこぼれ落ちそうに見開かれた大きな瞳が見えた。
よほどびっくりしたらしい。
まるで満月のようにまんまるになっている。
「一体何が……」
落ちていったのだろう、とアオイが視線を移すと、階段の踊り場に、先ほどまで彼女の右足に付いていたはずの義足が転がっているのが見えた。
とにかく、とアオイは彼女の体を階段の一番上に座らせると、踊り場に落ちている義足を拾ってきた。
「外れてしまったようですね。よろしければ付けて差し上げましょうか?」
テキパキと、義足に絡みついている包帯を解きながらアオイが問いかけると、彼女は「お、お願いします」と申し訳なさそうに小さな声で言った。
「では」
と言ってアオイは隊服の裾に手をかけたが、チラリと覗いた足を見て手を止めた。
その足は膝から下が無く、その断面はほんのりと赤みがかっており肌が白いせいで余計に痛々しく見えた。