第21章 番外編 其の弐
その夜、いつものように川の字に布団を敷いて眠りにつこうという時、すでに布団の中に入っていた咲が桜寿郎のことを呼んだ。
「桜寿郎、こちらへ」
そう言って自分の布団をめくる咲。
布団に横たわりながらにっこりと微笑んでいる母親の顔を見て、桜寿郎は照れたように頬を赤くすると頭をブンブンと振った。
「母上!俺は強き者にならねばならぬのです!!そのような幼子のようなことは出来ません!!」
「だからですよ、桜寿郎。母は今日の出来事がとても怖かったのです。だから、桜寿郎に一緒に寝て欲しいのです」
穏やかに、まるで諭すような口調で話す咲の言葉を聞いて、咲の隣で同じく布団に入ろうとしていた杏寿郎が驚いて寄ってくる。
「よもや!!それほどまでに恐ろしかったか!!可哀想に…ならば俺の布団で一緒に寝ようではないか!!」
だが、それに対して咲は少し体を傾けて肩ごしに振り返ると、申し訳なさそうに眉を下げた。
「ごめんなさい杏寿郎さん、今日は桜寿郎と寝ますので…」
「よもや゛っっっ!!」
思わぬ返答に、喀血しチーンと自分の布団に沈み込む杏寿郎。
「さぁ、桜寿郎」
と再度布団を持ち上げて呼ぶ咲。
その柔らかな声に、ついに桜寿郎も陥落して、おずおずと布団に入ってきた。