第21章 番外編 其の弐
「なんと!!咲、相変わらずの腕前だな!!あっぱれだ!!よくやったぞっ!!さすがは俺の元弟子だ!!」
桜寿郎の言葉を聞き、溜飲が下がったように喜ぶ杏寿郎。
だがすぐに、悔しそうに俯いている息子の様子に気がつくと、スッとその前に膝をついて燃えるような赤い瞳で見下ろした。
杏寿郎の視線を受けて、まだ俯いたままの桜寿郎であったが少しずつ話し始める。
「…俺は、母上をお守りすると父上や叔父上と約束したのに、俺が弱いばかりに母上をお守りすることが出来ませんでした。それどころか、俺が母上に守られてしまいました。…男として不甲斐なし…!!」
その俯いた姿を杏寿郎はじっと見下ろしていたが、少しの間を置いてから言った。
「悔しいか、桜寿郎」
その言葉に、桜寿郎はビクッと体を揺らす。
それからすぐに、
「悔しいです…っ!!」
と、まるで絞り出すような声を上げた。
その握った拳の上に、ボタボタと涙が落ちていく。
桜寿郎の黄金色の小さな頭はブルブルと震えていた。
「ならば強くなれ。大切な人を守れるよう、自分を誇れるよう。強き者になるのだ、桜寿郎」
「うぅ…っ!!はい…っ!!」
桜寿郎は、涙声になりながらも大きな声で返事をした。
その頭を杏寿郎の大きな手がわしゃわしゃと撫で回す。
その光景を見つめながら、咲もまた涙を流したのだった。