第21章 番外編 其の弐
その晩、帰宅した杏寿郎に咲は昼間の出来事について報告した。
そんな出来事があったと知ったら杏寿郎がひどく心配するだろうことは分かっていたが、隠し通せるようなものではないし、隠したらさらに杏寿郎を不安にさせるだろうことが分かっていたので、咲はおずおずと話しをしたのだった。
「…よもや、それはどこのどいつらだ。俺の咲に手を出そうとはいい覚悟だ。この俺が滅殺してやろう…」
ギラリと目を光らせて、先ほど腰から抜いたばかりの刀を再度差そうとする杏寿郎を、
「わぁっ、杏寿郎さん!!お父様と同じようなことを仰らないでください!!」
と慌てて止める咲。
そんな二人の横で桜寿郎はやや俯き加減で正座をしていたのだが、膝の上に乗せた拳をぎゅっと握り締めると、普段のはつらつとした大声に比べて随分と小さな声で言った。
「ですが、その不埒者共は…母上が成敗されました」
ハッとして咲が振り返ると、桜寿郎の表情はとても悔しそうに歪んでいた。