第21章 番外編 其の弐
「そ、それにな、そいつらにはもう若奥さんからキツーイお灸が据えられてるから大丈夫さ!」
「キツーイお灸?」
槇寿郎と千寿郎は首を傾げる。
「あぁ!あっという間だったぜぇ!!若奥さんが目にも止まらぬ速さで、こんな細腕で男達をのしちまったんだから!!」
その時の光景を思い出しているのだろうか、店主達は目をキラキラとさせながら言う。
「カッコ良かったよなぁ!!さすがは煉獄家の若奥様だ!!煉獄家ってのは、男だけじゃなくて女も強いのかい?」
まるで少年が強者に憧れるような口調で問われた内容に、咲達は「あ、あはは」と苦笑いするしかなかった。
まさか鬼殺隊で隠をしていたとは言えない。
そもそも煉獄家は、その家柄の古さと堂々たる振る舞い、その振る舞いに恥じない剣の強さから住民達に尊敬の念を持って受け入れられているが、実のところ家業については秘匿し続けてきた。
だから、本当のことなど言えるはずもないのだ。
「なに…たしなみとして、最低限の武術を身につけているだけですよ」
と、少し落ち着きを取り戻したらしい槇寿郎が取り繕うように言う。
「へぇー!!だけど本当に鮮やかな一発だったぜー!俺ァもう、胸がスーッとしちまったよ!!」
「なぁー!あんだけ腕っ節が強けりゃぁ、もう怖いもん無しだぜぇ!」
と嬉しそうに話す店主達。
そうしてひとしきり咲の手腕の鮮やかさについて語った後、店主達は笑顔で帰って行ったのだった。