第21章 番外編 其の弐
結局、店主達が二人を家まで送ってくれたのだった。
おまけに、お見舞いだと言って大量のサービスまでつけてくれた。
ここまで良くしてくれるのは、何も咲が常連さんだからという理由だけではない。
二人共咲の可愛らしい容姿や礼儀正しい態度に好感を抱いており、まるで自分の娘のように思っていたからだ。
何より、そこにいるだけでパッと花の咲いたように可憐な咲が買い物に来てくれるのは、日々のささやかな楽しみになっていた。
玄関に立つ、目元を腫らし手を擦りむいた桜寿郎と、着物の膝を土で汚した咲、そして送ってきた店主達の姿を見て、槇寿郎と千寿郎はびっくり仰天した。
「どっ、どうしたのだ、その姿は!!何があったのだっ!!」
いつもは冷静な槇寿郎がうろたえたように大声を出す。
「咲さん!!桜寿郎!!」
千寿郎も瞳がこぼれ落ちそうなほどに目を見開いている。
そんな二人に対して、八百屋と魚屋の店主が事の経緯をカクカクシカジカと説明すると、槇寿郎の顔色が変わった。
「おのれ…どこのどいつらだ…この俺が成敗してくれるっ!!」
そう叫ぶやいなや槇寿郎が家を飛び出して行こうとしたので、千寿郎と店主達が慌てて飛びついて止める。
「ですが…このまま捨て置くこともできませんよね」
ぱっと見冷静そうな千寿郎も、父親の体を押さえているくせに顔に濃い影をかけながらドスの効いた声を発する。
その額には青筋が浮かんでおり、全く冷静ではないことが窺えた。
だがもちろん咲には背を向けている。
「わぁーっ!!なんであんたらはそんなに血の気が多いんだよっ!!」
と、店主らは慌てた。
この猛獣みたいな偉丈夫二人を、しがない商店の店主である自分達が止められるとは到底思えなかったからだ。
だから二人は慌てて、先ほどの説明の続きを話し始めた。