第3章 おはぎと抹茶
その日も彼女はしのぶのもとへとやって来ていた。
不思議なことに彼女はいつも藤の花の香りをまとっていて、すれ違った時などにふわりと香るその匂いはとても甘く華やかであった。
だが、それと同時に藤襲山での最終戦別のことを思い出させて、アオイはいつも胸が少し締め付けられるような気がするのだった。
洗濯物を持ってアオイが階段を上っていると、二階にあるしのぶの診察室から出てきた彼女が階段を下りてくるところだった。
離れていても香ってくる藤の花の香り。
鎹鴉達に支給されている藤の花の匂い袋でも持っているのだろうか?
そんなことを考えながら軽く会釈をしてすれ違おうとした時、突如としてガクンと彼女の体が沈んだ。
「あっ」
「危ないっ!」
傾いていくその小さな体を見た時、瞬間的にアオイは持っていた洗濯物を放り投げて、彼女の体を抱きとめていた。