第21章 番外編 其の弐
住宅街を抜けて少し行った先に、いつも買い物をしている商店街はある。
今日も道には大勢の人達が行き交い、商店街は活気に溢れて賑やかであった。
そんな中を二人は並んで歩いていく。
店先に並べられた新鮮な食材を眺めながら咲は、「今日のお夕飯は何にしよう」と思案する。
今夜は杏寿郎さんがお戻りになられる日だから、さつまいもご飯にしようかしら…などと考えていると、ふいに横から声をかけられた。
「こんにちは!いいお天気ですね」
聞き覚えのない声に咲がそちらに顔を向けると、そこには着物を着崩した若い男が二人立っていた。
「…?」
見ず知らずの男に非常に馴れ馴れしい口調で話しかけられ、咲は一瞬自分の記憶の中を探ってしまう。
もしや忘れているだけでお知り合いだっただろうか?
そうだったら早く思い出さなければ失礼にあたる、と。
だがそんな咲の配慮は全くの無駄に終わった。
「ねぇねぇお姉さん、弟の子守りなんてやめてさ、俺達と遊ばない?」
男が発した軽薄な言葉に、咲は「あぁ、そうか」と急に腑に落ちた。
これはいわゆるナンパというやつだ。
若い頃、まだ隠をしていた頃には町でよくこういう輩に絡まれたことを咲は思い出す。
(あれ…?だけど、そう言えば結婚してからは一度もそういうの無かったような…)
そんなことを考えたことも無かった咲だったが、ふとそう思い当たる。
それが何故なのか咲の中で正確な答えが導き出されることはなかったが、その真相は付き添いの千寿郎の行動にある。