第21章 番外編 其の弐
火凛は、咲にそっくりの可愛らしい容姿をしており、夜泣きもあまりしない手のかからない子であった。
これは第一子の桜寿郎にも言えることだったが、どういう訳か咲が抱くとすぐに泣き止んでくれるので、非常に子育てが楽なのだった。
その日も咲がそろそろ買い物に出かけようかと思った時、先ほど授乳を終えて腹の満たされた火凛はスヤスヤと可愛らしい寝息を立ててよく眠っていた。
「よく寝てる…」
その姿を見つめながら、ほわん、と咲は頬を緩ませて微笑む。
ふっくらとした白い頬に、きゅっと握り締められた小さな手が可愛くて可愛くて、ついつい顔が緩んでしまうのだ。
可愛くて、愛おしくて、幸せがどんどん溢れてきて胸がはち切れてしまいそうだ。
こんなに幸せそうに眠っている我が子を起こしてしまうのは忍びなかったので、咲はいつも付き添いをお願いしている千寿郎に子守りをお願いして、桜寿郎と共に買い物に出かけたのだった。
「母上!俺がお荷物をお持ちします!!」
「ありがとう桜寿郎。頼りにしていますよ」
意気揚々と声を上げ、焔色の小さな頭を揺らしながら隣を歩く桜寿郎を見下ろしながら、咲はにっこりと微笑む。
桜寿郎はもうすぐ6歳になる。
3歳の頃から杏寿郎の指導のもと剣を振り始めた桜寿郎は、体格こそまだまだ子どもだが、父親譲りの凛々しさと頼もしさを持った逞しい子に成長していた。