第3章 おはぎと抹茶
そんな事をぐるぐると考え続けながら自己嫌悪の日々を送っていたアオイは、ある時ふと、定期的にしのぶのもとに通ってくる一人の隠の存在に気がついた。
小柄な体格から見ても、自分よりも年若い少女であることは一目瞭然であった。
彼女は大体月に一度、しのぶの診察を受けにやって来る。
蝶屋敷は怪我をした隊士達の療養の場になっており、怪我人の搬送のためほぼ毎日のように幾人もの隠が訪れている。
だから隠の姿など珍しくも無かったし、それに皆黒子のような隊服に身を包み顔の大部分を隠してしまっているので、正直言って誰が誰だか区別もついていなかった。
そんな中で彼女にだけ目が留まったのは、脚絆でしっかりとくくりつけられた右足の義足のせいだった。
木を削って作っただけの簡易的な義足。
それは義足と言うより、ほとんど木の棒と言っても良いくらいのものだった。
だが、それが今の世の中で使用されている義足の、ごくごく一般的なものであるということを、ある出来事をきっかけに知ったのだった。