第20章 番外編 其の壱【R18含む】
桜寿郎は、父親の杏寿郎に似て頑丈な体をしており、特に病気をすることもなくすくすくと育っていった。
そして一歳頃になると、徐々に意味を成す単語を話し始めるようになった。
当然、最初に呼んだのは咲のことである。
「ははうえ」
と桜寿郎が言った時には、煉獄家中がひっくり返るかと思うほどの騒ぎであった。
桜寿郎は覚えの早い子で、その後はすぐに「ちちうえ」を覚え、千寿郎のことは「おじうえ」と覚えた。
「~うえ」、の法則があったのでそこまではスムーズだったのだが、問題は槇寿郎に対する呼び方であった。
杏寿郎達が「父上」と呼んでいるので、どうしても「ちちうえ」になってしまうのだ。
容姿的にはそれほどの違和感は無いのだが、やはりそれとこれとは別問題である。
咲や杏寿郎が何度「おじいさま」と教えてもなかなか幼児には難しいようで、しばらくは「ちちうえ」の時期が続いた。
槇寿郎は、やはり孫を前にしても杏寿郎や千寿郎の手前照れがあるようで、不死川のような表情を見せることはしない。
だが、咲が少し席を外すために桜寿郎を抱いてもらっている時など、周囲に誰もいない時には少し照れながらも「よしよし、桜寿郎、ばぁ」などとこっそり笑いかけていたのを咲は知っている。
だからこそ、早く槇寿郎のことも呼んであげて欲しいと咲は願っているのだった。