第20章 番外編 其の壱【R18含む】
翌朝、朝日がまだ姿を現す前、うっすらと辺りが白んでくるのと同時に杏寿郎が帰宅した。
一晩中落ち着かず家の中をウロウロしていた槇寿郎は、玄関の扉が勢いよく開け放たれる音を聞くと、ドスドスと駆けつけた。
「杏寿郎、お前、任務はちゃんと全うしたのだろうな?!」
あまりにも早すぎる帰宅と、傷も汚れもついていないその綺麗な姿を見て、真面目な息子のことだから無いだろうとは思いつつも、つい心配になって槇寿郎は聞いてしまう。
「ご心配には及びません父上!!鬼は瞬殺して参りました!!」
それに対するは杏寿郎の普段以上のクソデカボイス。
そのまま、そのそっくりな容姿を持つ二人は咲のいる座敷を目指して廊下を疾走した。
だが、台所で沸かした湯を運んでいた千寿郎と廊下の角でかち合うと、普段の関係性が逆転したかのように、
「兄上!父上!お静かに!!」
と大喝された。
「す、すまんっ!!」
二人揃って謝る姿は、本当に瓜二つである。
と、その時部屋の中から赤ん坊の元気な産声が聞こえた。
すぐに、額に汗を浮かべたお政が部屋から出てきてニカッと笑う。
「若様、お殿様、坊ちゃん、無事に生まれましたよ!母子共に何も問題ありません」
「も、もう、部屋に入っても良いのか、お政殿?!大丈夫なのか!??」
と食いつくように確認してから、そっくりな三人は部屋の中に転がるようにして飛び込んだ。