第20章 番外編 其の壱【R18含む】
屋敷に戻ると、杏寿郎の腕に抱えられている咲を見て槇寿郎と千寿郎が驚いた顔をした。
「どこかお怪我をされたのですかっ!!?」
飛び上がるようにして駆け寄ってきた二人に、杏寿郎が「驚かせてすまない」とまず詫びると、すうっと大きく息を吸った。
「父上、千寿郎、咲が子を身ごもりました!!」
「なんと!!」
普段は鋭く細められている槇寿郎の瞳が、杏寿郎の瞳そっくりに大きく見開かれる。
「おめでとうございますっ!!」
千寿郎も、幼さの残るふっくらした頬を上気させて祝いの言葉を叫んだ。
「そうと分かれば今日は祝いの馳走だ!!」
おもむろに槇寿郎が叫んだかと思ったら、咲があっ、と声を上げる間もなく、槇寿郎と千寿郎は家から飛び出して行ってしまったのだった。
その日の夕飯は、槇寿郎、杏寿郎、千寿郎の男三人による力作となった。
杏寿郎も運良く任務の指令が来ていなかったため、共に夕食を囲むことができる。
咲の懐妊を知るやいなや門から飛び出していった二人が買ってきたのは、見事な尾頭付きの鯛と、咲の好物である大福だった。
いつもは咲が立ち働いている台所に、そっくりの容姿をした大・中・小の男たちがズラリと居並ぶ。
咲はと言えば、大福が山と積まれた大皿と高級玉露の入った湯のみと一緒に、屋敷内で一番日当たりの良い部屋に座らされたのだった。