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【鬼滅の刃/煉獄】冬来たりなば春遠からじ

第20章  番外編 其の壱【R18含む】



咲達がやって来たのは、お政(おまさ)という大ベテランの産婆が何十年も前から続けている町の産院だ。

実は杏寿郎と千寿郎はこの産婆さんに取り上げてもらっており、そして更に言うと父・槇寿郎もこの産婆の世話になっていた。

年の頃は60代くらいであろうか。

「お政」という名前が表すとおり、少し男勝りな印象のハキハキとした気持ちの良い話し方をする老女で、並みの男など吹き飛ばしてしまいそうな豪快さがあった。

だがその力強い立ち居振る舞いの合間には、まるで全てのものを受け入れ包み込んでくれるような慈愛に満ちた優しい笑顔を見せるのだった。

さすがは何千人もの赤子を取り上げてきた女性である。

そんなお政の待つ診察室に咲と杏寿郎が二人揃って入ると、机に向かっていたお政が振り返り、喜びが爆発したような声を上げた。

「まぁまぁ、煉獄の若様!お久しゅうございます。ご立派になられて…!!お殿様や坊ちゃんもお変わりありませんか?」

老婆の快活さと、若様、お殿様、坊ちゃんという呼び名に、咲は叫びだしたいような気持ちになる。

驚きとか納得とか感心とか、色々な感情が一気に巻き起こったからだ。

「お久しぶりですお政殿!相変わらずのご活躍ぶり、聞き及んでおります。今日は妻が世話になります」

惚れ惚れするような凛々しい表情で頭を下げた杏寿郎が、ちょっと目を丸くしながら隣に立っている咲の背中に手を添える。

その手の感触に、咲も慌てて頭を下げた。

そんな咲と目が合ったお政は、またもや喜びを爆発させる。

「まぁまぁ、こちらが奥方様!なんて可愛らしい方なんでしょう!若様とよくお似合いですよ!」

「ありがとうございます!!」

お政の言葉に喜びを隠さない杏寿郎と、少し恥ずかしくてはにかんでいる咲。

自分の取り上げた赤子がこのような堂々たる男子となって元気な姿を見せてくれ、さらには妻まで伴っていたので、お政はまるで自分の身内のことのように喜んでいる様子だった。

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