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【鬼滅の刃/煉獄】冬来たりなば春遠からじ

第20章  番外編 其の壱【R18含む】



そんな風にして穏やかな日々が過ぎていった。

そして季節が秋に差し掛かろうかという頃、咲の体にある変化が訪れた。

月のものが予定通りに来なかったのだ。

鬼殺隊時代は、その任務の大変さや鬼に常に追い回されているというストレスのせいか月のものがやや不規則だった咲だが、杏寿郎と結婚してからは驚く程規則的になっていた。

それが、結婚以来初めて遅れたのだ。

咲は手水場で手を洗いながら、これはもしや…と思った。


その日は雲一つない秋晴れで、杏寿郎は庭に出て竹刀を振っていた。

自宅で鍛錬する場合、杏寿郎はよくここで剣を振るう。

ここでよくよく自分の太刀筋を確認し、夜の任務に向けて集中力を高めてゆくのである。

千人分の栄養があると言われている、稀血の中でも希少な血を持つ咲のことを残して出かけていくことは、本音を言えば杏寿郎としてもしたくはなかった。

出来ることならばずっと一緒にいたい。

そばで、彼女の身に危険が迫らないようにいつでも見守っていたい。

だが現実は中々そういう訳にもいかないので、杏寿郎はそんな自分の甘えた心を毎日必死に律しているのだった。

それに、稀血の咲のことを心配しているのは杏寿郎だけではなく、庭には随分前に槇寿郎が大きな藤の花の木を植えてくれていた。

言わずもがな、鬼よけのためである。

そして槇寿郎は、随分前に炎柱を引退したとはいえ今尚屈強な体格を保っている。

その槇寿郎が家にいてくれるのであれば、たとえ鬼が来ようとも瞬殺であろう。

そういうこともあって、杏寿郎は稀血である妻を家に残しながらも、安心して任務に向かえているのだった。

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