第20章 番外編 其の壱【R18含む】
杏寿郎は、抱き寄せるようにして咲の胸に耳を当てる。
ふんわりとした乳房の感触。
その小鳥のように柔らかく温かな胸の奥からドッドッドッと鼓動が響いてくる。
「むう!随分と早いようだな!」
杏寿郎の指摘に、咲の顔はポポポと赤くなる。
「咲もまだまだ修行が足りんな!」
布団から顔を出してニンマリと、普段はあまりしないようなイタズラっぽい笑顔を浮かべた杏寿郎を見て、咲は「あっ」と声を上げる。
「杏寿郎さん!!また全集中の呼吸で制御されていますね!!?ずるいです!」
「ははは!!」
愉快そうに笑いながらも、サラリと咲の長い髪を指で梳く杏寿郎。
咲は隠を引退してから髪を伸ばし始めた。
杏寿郎の母・瑠火とよく似た容姿は、そうすることによってより一層似通ったものになった。
だが、当たり前のことだが瓜二つという訳ではない。
やはり、咲には咲らしさがあり、彼女にしかできない表情というものがある。
(それに、そもそも生き写しのように似ていたら、このような行為など出来ようはずもない)
そんなことを考えながら、杏寿郎は咲の髪に唇を寄せて、
「俺は、こうするのが好きだな」
と笑った。