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【鬼滅の刃/煉獄】冬来たりなば春遠からじ

第20章  番外編 其の壱【R18含む】



咲は、夫の自分がこう言うのも手前味噌かもしれないが、滅多にいないような出来た女性である。

だから不必要に浮気を疑ってヒステリーを起こしたり、自分のことをなじってきたりするようなことは決してしない。

だが、だからいいということではないのだ。

この世で最も愛している女性に誤解されて平気な男などいるものか。

「い、いやっ!違うぞ咲!!そういう事ではない!!」

男女の感情の機微には疎いようでいて実はしっかりと頭の回る杏寿郎は、咲が想像していることを正確に理解して、わたわたと鬼殺任務の際には絶対に見せることのないような慌てた顔をしてだばだばと腕を振った。

そんな杏寿郎を、なんと表現したらよいのか、あえて言うならばキョトンとした顔をして見つめる咲。

その丸い瞳にまじまじと見つめられた杏寿郎は、自分は上手くごまかせる様なタイプではないことを自覚していたので、潔く腹をくくってあっさりと白状した。

「…あー、実は宇髄に教えを乞うたのだ」

「えぇっ!!」

杏寿郎の返答に、咲は頬を染めて飛び上がった。

宇髄は鬼殺隊の仲間であり元上官であり、家族ぐるみで付き合いもあるもはや親族と言っても良いような間柄である。

その親族に情事の一端を知られたかと思うと、顔から火が出そうなくらい恥ずかしくなる。

実際、咲の顔はゆでダコのように真っ赤になっていた。

そんな咲を見て、杏寿郎はもはや普段の堂々とした振る舞いはどこへ行ったのやら、眉をへなへなと下げながらあわあわと弁明し始めた。

その口調は、普段のものより随分と早い。

「いかに女性に負担をかけずにするか、ということを聞きに行ったのだ!決して我らのことを話したのではない!彼は元々の職業柄、そのような事柄にも精通しているゆえ…」

だがそこで、杏寿郎は口をつぐんだ。

「だが…そうだな。俺のようながさつな朴念仁と違って、女性の咲が恥ずかしく感じるのは当然のことだ…。そこまで思い至れなかった俺に全ての非がある…本当にすまない、許してくれ」

子犬のような顔をして謝ってきた杏寿郎に、咲の中でパァンと色々な感情が弾けた。

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