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【鬼滅の刃/煉獄】冬来たりなば春遠からじ

第20章  番外編 其の壱【R18含む】



まさか曲がった先でこんな光景が繰り広げられているとは知る由もなかった千寿郎は、飛び上がらんばかりに驚いて、ペコペコと頭を下げて謝ってきた。

ちなみに、咲が杏寿郎と結婚した後、千寿郎は今までの「咲さん」という呼び方を「姉上」に改めようとした。

だが、長年の呼び方をすぐに変えることは中々に難しいことで、よく「咲さ…あっ!すみません、姉上っ!!」などということが繰り返されたので、咲の方から「気にしないで、もともとの呼び方でいいよ」と伝えたのだ。

それは咲の正直な気持ちでもあったし、弟や妹が欲しかった咲としては「姉上」と呼ばれることに心が弾むのを感じてもいたが、肝心なのは呼ばれ方ではなく「弟ができた」という事実なので、そんな瑣末なことにこだわって千寿郎の気を煩わせたくはなかったのである。

そんな経緯もあり、千寿郎は今も咲のことをさん付けで呼んでいる。

平身低頭して謝る千寿郎に、杏寿郎は咲に向ける蕩けたような笑顔ではなく、兄の表情に戻って言った。

「気にすることはない千寿郎!」

「そっ、そうだよ、千寿郎くん!むしろこちらこそ気を使わせてごめんね」

杏寿郎には全く照れている様子は無いが、咲は少し頬を赤らめながら言う。

その可愛らしい表情が、時々千寿郎をさらに赤面させていることには気づいていない。

「おいで、千寿郎」

咲を腕に抱いたまま、杏寿郎が千寿郎に向かって手招きをする。

そんな杏寿郎の意図を察して、咲も同じように千寿郎に向かって手を差し伸べる。

兄夫婦から手招きをされては弟として逆らうこともできず、また、不快感など一切感じていない千寿郎は、戸惑いつつも一歩二歩と二人に近づいて行った。

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