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【鬼滅の刃/煉獄】冬来たりなば春遠からじ

第20章  番外編 其の壱【R18含む】



そうしてしばらくお互いの体温を感じあっていたが、不意に杏寿郎が声を上げた。

「むう、困った!これは実に困ったぞ!!」

突然の杏寿郎の言葉に、咲はびっくりして顔を上げる。

「ど、どうしました杏寿郎さん?!何か問題でもありましたか…?」

目をまん丸に見開いて見上げてくる咲のことを見下ろしながら、杏寿郎は弾けるような声で言った。

「咲のことをずっと抱きしめていたいのに、君の顔も見たいのだ!!俺は何てワガママなのだろう!」

そう言ってニコッと白い歯を見せて笑う。

杏寿郎は、伊之助などには「ギョロギョロ目ん玉」とあだ名されてしまうほど瞳が大きく、またその視線も場合によっては異様に見えることもあり、隊士達からは僅かながらのとまどいと畏敬の念を持って見られることが多い。

だがそんな彼が今浮かべている笑顔は、強烈な視線の持ち主とは思えぬほど優しく柔らかなものなのだ。

そんな笑顔を不意に向けられ、そして臆面もなく伝えられた感謝の言葉に、咲は一瞬呆気に取られたような表情をしたが、すぐに嬉しさが溢れ出るような笑顔になってより強くぎゅうっと杏寿郎に抱きついた。

「私もです!貴方のこの逞しい腕の中にずっといたいと思うのに、お顔も見たい。一体どうしましょう!」

「それは困ったな!」

「はい!困りましたね」

そんな風にして二人がじゃれているところに、廊下の角から千寿郎が姿を現した。

彼も咲同様に、元・炎柱の父と、現・炎柱の兄を持つ、生粋の鬼殺一家の人間であるため、通常の人々よりもずっと早い時間に起きて細々と仕事をこなしている。

玄関の開く音を聞きつけて兄の帰宅を知り、挨拶をするためにやって来たのだ。

「あわっ、わぁっ!!もっ、申し訳ありません兄上!咲さん!」

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