第1章 稀血の子
ぐいっとさらに持ち上げられて、鬼の顔がすぐ目の前にまで迫ってくる。
夜なのに、不思議とその表情の細部まで、口元に寄った醜悪なシワの一本一本までがよく見えた。
「お前をかばって皆死んだなぁ。お前がマレチのせいで、俺はここに引き寄せられた。お前が家族を殺したようなものだなぁ」
ニタァと笑った拍子にむき出しにされた鬼の牙は、真っ赤な血でぬらぬらと濡れていた。
それは皆の……、私の家族の血だった。
「……っ!!」
離せ、と叫びたいのに、私の喉には空気の栓が詰められてしまったかのように声が出てこない。
もがこうと思っているのに、体が硬直して動かない。
嫌だ、嫌だ、嫌だ!
怖い!!
喰われる……喰われてしまう……!!