第1章 稀血の子
「あーん」
鬼の口が奇妙なほどに大きく開き、洞穴のような暗闇が近づいて来るのが見えて、私はゾオッと言いようのない恐怖に吸い込まれていく気がした。
嫌だ!嫌だ!嫌だ!!
なのに私の体は、僅かに揺れる程度にしか動かない。
そして次の瞬間、ギシュッという生々しい音が鼓膜に直接響いたような気がした。
すーっ、と全身の血が冷たくなっていく感覚に包まれる。
そしてその後、右足から燃えるような熱さがこみ上げてきた。
いや違う、これは「痛い」だ。
「あ゛っ、あ゛ぁ゛ぁぁっ!!!」
ギチュッ、ギチュッ、とまるで少しずつちぎられるようにして肉が切り裂かれていく。
それから、ボキン、と骨の絶たれる音が聞こえた。
不思議なことに、それが骨の立てる音だと私ははっきり理解できたのだった。