第2章 逢魔が時
「ごっ、ごめんっ!!つい……!悪気は無かったんだ!!」
「あーっ!!炭治郎、咲ちゃんに何してんだよーっ!!とんでもねぇ炭治郎だ!!」
「違うんだ善逸!別に俺は邪な気持ちでやった訳じゃなくて……」
アタフタと炭治郎が言い訳を始めた時、部屋の隅に置かれていた木箱からカリカリと爪で引っかくような小さな音が聞こえた。
「あっ、そ、そうだ咲!妹の禰豆子を紹介するよ!」
そう言われた瞬間、咲は僅かにギョッとした表情を浮かべた。
だがその変化はごくごく僅かなものだったので、失態を犯してアタフタしている炭治郎も、すっかり禰豆子の方に意識が持って行かれた善逸も、ましてやあまり周りのことになど頓着しない伊之助も気づきはしなかった。
炭治郎は場を取り繕おうとするかのように、いそいそと縁側に面した障子を閉め始める。
日の光の元では、鬼である禰豆子は霧雲杉で作られた背負箱から出てこられないのだ。
そんな炭治郎の姿を目で追いながら、咲はゴクリと喉を鳴らした。