第19章 その後のはなし
「ようこそおいでくださいました。この度は誠におめでとうございます」
温泉宿に到着すると、 ひさ によく似た小柄な老婆が二人を出迎えてくれた。
宿の手配をする際に宇髄が伝えてくれたらしく、老婆はおっとりとした口調で言祝(ことほ)ぐと、うやうやしく頭を下げた。
「わたくしは、お二人のお世話をさせていただきます とき と申します。どうぞよろしくお願いいたします」
「ありがとうございます。数日間、ご厄介になります」
「よろしくお願いいたします」
老婆の丁寧な所作に、杏寿郎と咲も深く頭を下げた。
二人の部屋は本館から渡り廊下でつながった離れであり、貸切の露天風呂も併設されている大きな部屋だった。
とき が部屋まで案内してくれて、その時の雑談の中で、 とき は ひさ の妹であることが知れる。
「実を申しますと、姉の ひさ からも、お二人のことは伺っておりました。本当によくお似合いの二人だと」
そう言ってにっこりと笑った とき の優しい顔は、ますます ひさ とよく似ているのだった。
夕餉の時間になり、咲は、とき は、さすがは ひさ の妹だなぁ、とますます感心を深めることになったのだった。
何しろその給仕には一切の無駄が無い。
ひさ に勝るとも劣らない鮮やかな手際で配膳されたご馳走に、咲はもはや感心というより尊敬の念を感じた。
この小柄な老婆の一体どこに、この俊敏さが隠されているというのだろうか。
「お食事でございます」
と呼びに来てくれた とき の後ろには、つい先ほどまでは無かったご馳走が、整然と並べられていたのだった。
杏寿郎が大食漢であるという情報も当然入手済みのようで、大きなおひつまで添えられている。
「うわぁ…すごい料理ですね」
「うむ!宇髄に感謝しなくてはな!」