第16章 つりあい
妹の禰豆子が戦いで傷を負うたびに、いつもヒヤリとする。
鬼だから、傷はすぐに回復することは分かっている。
それでも、血に濡れた妹の白い肌を見るたびに胸がえぐられるように痛み、そして、何の痕跡もなく綺麗に治った体を見て、心の底から安堵する。
(嫁入り前の女の子の体に、傷でも残ったら大変だ)
と、つい思ってしまうのだ。
(…そうだよなぁ……)
女の子であれば誰だって、綺麗な体のままでいたいに決まっている。
切り傷一つ、かすり傷一つですら気にするのだ。
それを、この子は片足を失ってしまった。
普段はまったく気にしている素振りも見せずに気丈にしているけれど、この小さな胸の奥ではいつも恥じていたのだ。
片足の無い、自分の容姿のことを。
(当然だ……。だって咲は、女の子なのだから)
炭治郎は咲を慰める言葉が見つからなかった。
「……杏寿郎さんには、美しくて健康で、お家柄も見合った、もっとふさわしい女性がいるのではないか、と思ってしまうのです。私のような醜い者などでは、あの素晴らしい方にとてもつりあいが取れないと……」
「……!!!それは違うぞ咲!!」
炭治郎が声を上げた。
「自分のことを”醜い”だなんて言うな!」
炭治郎の突然の大声に、咲は顔を上げた。
伏せられていたその大きな両目には、いつの間にか涙が溜まっていた。