第16章 つりあい
「煉獄さんは、人を見た目や家柄で判断するような人じゃない。ちゃんと、心の目で見てくれる人だ!…それは咲も分かっているだろう?」
今度は声を落として、そっ、と炭治郎は咲の両手を握った。
「俺は、咲がどれだけ一生懸命な子か知ってるよ。片足を失っても頑張っている姿を見ると、俺も頑張ろうって、いつも勇気が出てくるんだ」
ポロリと、咲の目の淵から涙がこぼれ落ちる。
「…そんな咲だから、煉獄さんも好きになったんじゃないのかな。咲は醜くなんてないよ。すごく可愛くて、綺麗な女の子だよ」
炭治郎の目からもポロリと涙が落ちて、ポロリ、ポロリ、とまるで交互に雫を落とすようにして二人の両目から涙が溢れ出て行く。
「……炭治郎さん、ありがとうございます」
「咲、煉獄さんは強くて優しくて、心の大きな人だ。だからさ、咲は何も心配しないで、煉獄さんの胸に飛び込んでいけばいいんだよ」
「…はい!」
涙で頬を濡らしながら、はにかんだ笑顔を見せた咲を見て、いつか禰豆子にも好いた人ができて嫁ぐ日がやって来るのだろうか、とふと思いながら、ツンとする鼻の痛みとともに炭治郎も笑顔を浮かべたのだった。