第16章 つりあい
夕餉も済んだ頃、昼間の眠りから覚めた禰豆子が、霧雲杉の背負箱からもぞもぞと起き出してきた。
「ねぇずこちゃーん!!」
善逸が飛びつくようにして寄って行ったが、それよりも先に禰豆子の方が駆け出していた。
もちろん善逸のもとにではない。
炭治郎の隣に座っていた咲に向かってだ。
「むーっ!」
咲の膝に、もみじのような小さな手を置いて、ニコニコと笑った禰豆子は、ムクムクと体を膨らませて、あっという間に咲と同じくらいの体格へと変化した。
禰豆子は基本的には幼児の姿で過ごしているのだが、咲を前にすると本来の年齢の姿になるのだ。
同い年だから、友達のような感覚なのかもしれない。
「禰豆子ちゃん、久しぶり」
今ではすっかり禰豆子に慣れた咲も、ニコニコと気のおけない笑顔を浮かべる。
「良かったなぁ、禰豆子」
咲に会えて嬉しそうな禰豆子に、兄の炭治郎も嬉しそうだ。
しばし、あやとりをやったり、禰豆子の髪を結ったりして、二人は女の子らしい遊びに興じた。
「はぁ~、いいねぇ。女の子って、見てるだけで楽しい」
ウフ、ウフフ、と、畳に腹ばいになりながら頬杖をついて、善逸が緩みきった顔で笑う。