第16章 つりあい
〇
蝶屋敷を出た咲が向かった先は、担当隊士である炭治郎達のもとであった。
彼らは今、任務後の休養のために藤の花の家紋の家に身を寄せている。
伊之助を孫のように可愛がってくれている ひさ のいる屋敷である。
「失礼いたします。炭治郎さん、善逸さん、伊之助親分、お久しぶりです」
開け放たれた障子の脇、縁側に膝をついて挨拶をした咲の姿を見て、わっ、と三人は勢いよく駆け寄って来た。
「咲!!鬼に襲われて蝶屋敷で療養してたって聞いたけど、怪我はもういいの!?」
「うええーん!!咲ちゃん、大丈夫!!?咲ちゃんが怪我したって聞いて、俺はもう心配で心配で…」
「オイ、咲!!お前あんだけ気をつけろって言っただろうが!!何してやがんだ!!怪我治ったのか!?俺様に見せてみろ!!」
わあわあ、と取り囲まれて、そのあまりの勢いにびっくりした咲だったが、すぐにニッコリと笑って見せた。
「ご心配おかけしました。怪我と言ってもかすり傷程度なので、全く問題ありません」
「そ、そっかぁ~…良かったぁ。俺はもう、気が気じゃなくてさぁ…」
ふしゅう、とまるで全身から空気が抜けたように背中を丸めた炭治郎は、いつの間にか咲の両手を包み込むように握っていた。
そう言う炭治郎の手の方にこそ包帯が巻かれていたので、咲は苦笑した。
「皆さんも任務で怪我をされて療養中と聞きました。お加減はいかがですか?」
「そんなモン、とっくに治ってるぜ!俺様を誰だと思ってやがる!」
「嘘つけよ!!お前肋骨折れてんだろが!」