第13章 小刀と拳銃
それからしばらくの間、咲は木板を相手に四苦八苦したのだった。
玄弥は易々と打ち抜いてみせたが、これがなかなかどうして、何発撃っても的に当たらないのだ。
炭治郎と共にいたあの時、初めて撃ってみた弾は、発射される勢いに負けて空へと消えていった。
そのことを意識し、玄弥が直してくれたフォーム通りに撃ってみようとするのだが、頭では分かっていても体がすぐにその通りに動いてくれる訳ではないので、咲の撃つ弾は森の奥に消えていくばかりだった。
とにかく今は、練習を重ねるしかなかった。
玄弥は自分の訓練をしながらも、時折様子を見に来てくれた。
その度に姿勢を直してくれたり、自分が的に当てられるようになった時に試してみたことなどを教えてくれるのだった。
咲は時折、拳銃を握る手をブラブラと振った。
剣術の稽古の時のように息が切れることは無かったが、硬い引き金を何度も何度も引くことで、指が異常に疲れるのだ。
集中力もずっと途切れさせることが出来ず、そういう意味でも非常に疲れた。
息が切れるのとはまた違った苦しさに咲は眉を寄せながらも、必死で鍛錬に取り組むのだった。
そうやって苦しさに耐えながら訓練をしていると、杏寿郎から指導を受けていた日々のことが思い起こされてくる。
杏寿郎は普段はとても優しいのだが、鍛錬となると話はまた別だった。
あのハツラツとした顔で、「素振りあと500回!!」などと、日が暮れかけた頃になっても言ったりする。
正直、相当苦しかった。
大げさではなく吐き気をもよおすほどに。
実際、はばかりに立った時に何度か戻してしまった事があったし、短い時間ではあるが意識が飛んだこともあった。