第2章 逢魔が時
話が終わると、杏寿郎としのぶの機嫌もすっかり普段の様子に戻り、今日はもう夜遅いから炭治郎達も蝶屋敷で休んで行くようにと言ってくれた。
さすがに柱達は精神の鍛錬がなされているので、気持ちの切り替えも早い。
蝶屋敷には以前にも何度も療養させてもらっていたので、屋敷の構造やその他もろもろについては勝手知ったるといったものだった。
炭治郎達が浴場に向かって廊下を歩いていると、向こうからやって来た杏寿郎とばったり鉢合わせた。
その腰には刀がしっかりと差されており、いつもの羽織を着ていた。
まるでこれから出陣するかのような出で立ちに、炭治郎が訊ねる。
「煉獄さんは泊まっていかれないんですか?」
「うむ!たった今、鴉から伝令が入った。至急向かわねばならん!」
「えっ、そうなんですか!?だったら俺達も一緒に――」
「ありがとう!だが心配ない。近隣の隊士達ですでに陣形は組まれている。君達には君達の伝令が下るだろうから、それを全うしてくれ」
「は、はい。でも、どうかお気をつけて!」
「うむ!君達もな!また会おう!」
そう言うと、燃える炎のような柄の入った羽織をはためかせて杏寿郎は廊下の先へと消えて行ったのだった。