第2章 逢魔が時
炭治郎の後ろに隠れるように座っている伊之助は、首が折れそうなほどにうなだれているし、関係ないはずの善逸までもがカタカタと震えていた。
伊之助の発言は確かに無神経だったかもしれない。
だが杏寿郎としのぶのこの怒り様はどうだろう、と炭治郎は目を見張る。
よほど咲の事が大事と見える。
二人共一見すると普段通りなのだが、内心では相当怒っていることが分かった。
鼻の利く炭治郎は、二人から流れてくる匂いでその事を強く感じていたのだ。
杏寿郎としのぶから聞いた話を、もう一度思い返してみる。
鬼に家族を殺され、自身もまたその脅威にさらされた。
さぞや怖かっただろう、辛かったことだろう……。
だが彼女は、不自由な体になりながらも隠となった。
しのぶの言った通り、それは血の滲むような努力を必要とする過酷な道だったに違いない。
(俺も、あの子のために力になってあげたいな)
誰にでも思いやり深い炭治郎だが、この話を聞いたことで特に彼女の事を深く心に留めるようになったのだった。