第13章 小刀と拳銃
「さぁ、行きましょう」と小さな手に引かれたが、さすがにあんな状況に陥っている炭治郎をこのまま置いていくことなどできない。
見ると炭治郎は、まだ木の上でへしょへしょと眉を下げて鋼鐵塚を見下ろしている。
「炭治郎さんっ」
咲は、鋼鐵塚をこれ以上興奮させないように一定の距離を取った上で、木の上の炭治郎に呼びかけた。
その声に気づいた炭治郎は、心配そうに見つめる咲の顔を見ると、「大丈夫、大丈夫」とでも言うかのように手を上げた。
そしておもむろにその手を羽織の袂に差し入れると、
「鋼鐵塚さんっ!本当に申し訳ありません!!これ、お詫びの品です!!」
と言って、何かの包みを差し出したのだった。
「みたらし団子です!!」
炭治郎がそう言うのと同時に、絶え間なく振り下ろされていた鋼鐵塚の包丁がピタリと止まった。
じっ、と炭治郎の手元の包みを見上げる鋼鐵塚。
そして、スッと包丁をしまうと、「んっ」と手を差し出したのだった。
まるで、「早く渡せ」とでも言うかのように。
かくして、鋼鐵塚の怒りはとりあえず収まったのだった。