第13章 小刀と拳銃
テクテクと並んで石畳の上を歩きながら、炭治郎が明るい声を上げる。
「良かったな、咲!すごく綺麗な刀だね」
さっそく小刀を腰に帯びている姿を見て、炭治郎はニコニコと笑顔を浮かべた。
「はい!お館様や音柱様、鉄珍様に感謝ですね」
咲は、今回このような計らいをしてくれた全ての人々の顔を思い浮かべながら、心の中で何度も礼を言った。
「ところで、炭治郎さんは今回はどうして里へ?」
咲がそう尋ねた途端、先ほどまで春のひだまりのようなポカポカとした笑顔を浮かべていた炭治郎の顔が、急に吹雪の中にいるような青い顔に変わった。
「うん…実は…また刀を刃こぼれさせちゃって……。それを鋼鐵塚さんに直してもらうために来たんだけど……」
トホホ…といった様子で炭治郎が頭を掻いた時、近くの茂みがガサリと揺れた。
はっ、として二人が顔を向けたその先には、両手に出刃包丁を握り締めたひょっとこ面の男が仁王立ちしていた。
「なァ~にィ~……?」
ワナワナと男の全身が震え始め、もともと赤いひょっとこの面がさらに赤くなったように見えた。
「はっ、鋼鐵塚さんっ!!」
炭治郎が思わず口元に手をやりながら、怯えたような声で叫んだ。
「ゆ、ゆゆゆ、許さんっ!!!よくも、俺のっ!!俺の刀をっ!!!」
そう言うやいなや、鋼鐵塚と呼ばれた男の着物がバアンッと弾け飛んだ。
その下から現れたのは、見事に鍛え上げられた筋骨隆々の体。
あんな立派な体格、鬼殺の剣士の中でもめったにお目にかかれない。
ザザザザッと、まるで人とは思えぬような奇妙な動きで茂みの中から躍り出てきた鋼鐵塚は、ほとんど奇声と言って良いような叫び声を上げながら炭治郎を追い回し始めた。
振り回される出刃包丁が、陽を反射して光の筋を作っている。
「わわっ!は、鋼鐵塚さんっ!やめてくださいっ!ごめんなさいっ!ホントに申し訳ありません!だから、包丁をしまってくださいーっ!!」