第13章 小刀と拳銃
「あれを、ここに」
パンパン、と鉄珍が手を叩くと、廊下に控えていた里の者が、細長い木箱を抱えて入ってきた。
剣士の刀が入っている箱によく似ているが、通常のものよりも随分と短い。
「隠であるお前さんには、小刀を作ってみたのじゃ」
目の前に置かれた箱を、鉄珍がぱかりと開けると、そこには黒漆の鞘にくるまれた綺麗な小刀が入っていた。
つやつやと黒く輝く鞘の先、こじりの上には、可愛らしい桜の花の彫り物があしらってある。
こいこい、と鉄珍に手招きされて側に寄った咲は、手渡された小刀をゆっくりと鞘から引き抜いてみた。
適度な抵抗感の後、まるでスルリと剥けるように出てきたその刃はキラキラと銀色に輝いており、思わず見とれてしまうほどに美しかった。
「この小刀は、剣士達の持つ日輪刀と同じ玉鋼からできているんじゃよ」
という鉄珍の説明を聞きながら、いつまでも色の変わらない刀身に、やはり自分はどこまでいっても剣士にはなれないのだということを咲は改めて思い知らされるのであった。
「用意した武器は、もう一つあるのじゃよ。それは蛍と小鉄に任せてあるから、取りに行くとよいぞ」
後で食べなさいと、鉄珍からもらったかりんとうの包みを持って、咲と炭治郎は座敷を辞去して、鋼鐵塚が日頃作業をしている小屋へと向かった。
後藤は、彼の用向きを果たすためそのまま座敷に残る。
彼の用向きとは、お館様からの書状であった。
内容はもちろん後藤にも分からない。