第11章 倒したのお前やで
「えっ、善逸さんっ!!?」
突然、全身から脱力して崩折れた善逸に咲はギョッとした。
とても信じられないことだが、善逸の鼻から、まごうことなき鼻ちょうちんが膨らんでいるのが見えたからだ。
「ね、寝てるっ!!?」
すぐ目の前には、猛烈な速度で迫ってくる鬼の姿。
「…っ!!」
咲は善逸の体を抱えたまま身を固くした。
それを見た宇髄の嫁達が「あっ!!」と叫んでクナイを投げようと振りかぶった時、
善逸が音も無くすっくりと立ち上がると、再び咲を庇うようにして立ちふさがったのだ。
シイイイイ……
と風を切るような音が善逸の口から漏れ出る。
彼は、ザン、と突然大きく踏み込んで刀の柄に手をかけ構えを取った。
「ぜん…」
いつさん、と咲が言う間も無く、
ドオンッ、とまるで雷が落ちたかのような雷鳴と振動が轟いた。
ビリビリと鼓膜を震わせる轟音と共に、目を開けていられないほどの閃きと突風が咲を襲う。
とっさにつぶった瞳を薄く開けた時にはもう、鬼の首はまるで鞠のように空高く跳ね上げられているところだった。
唖然として口を開けた咲の目の前で、ひゅうう、とゆっくりと落下してきた鬼の首が、べちゃん、と地面にぶつかり不気味な音を立てた。