第11章 倒したのお前やで
ザザザザッと、風を切って走る一行。
まず須磨が声を上げた。
「天元様っ!!咲ちゃんが危ないですよっ!!すぐに助けないとっ!!」
「善逸君だってあんなに震えて…!みんなで戦いましょう!!」
と雛鶴も青い顔をして叫ぶようにして言う。
「善逸が情けないのはこの際置いておいて、まずは咲を助けないと…!!」
まきをもそう叫び、嫁達は先頭を走る夫に向かって口々に言った。
彼女達の手には、常に装備しているクナイがすでに握られており、いつでも戦闘に入れる態勢になっていた。
だが一方の宇髄はと言うと、この状況にあってもなお何故か落ち着いた表情をしているのであった。
「大丈夫だ、あいつは強い。お前らもよく見ておけ」
「!!?」
夫のその自信に満ちた表情を見て、嫁達はピタリと騒ぐのをやめる。
いまだ困惑はある。
だがこの、体格にも戦いのセンスにも恵まれた、まさに俊英と言っていい夫の判断はいつも正しいということを、今まで共に乗り越えてきた戦いの中で十分すぎるほど彼女達は理解していた。
だからこそ、夫がそう言うのならば、と口をつぐんだのだった。