第11章 倒したのお前やで
とはいえ咲も鬼殺隊で隠として働いている訳で、夜間の任務に就くことも珍しくない。
当然、そういう時に鬼に出くわして追いかけられることもあった。
だから当の本人はいつもの事だと肝が据わっているのだが、そうは言っても危険は少ない方が良い。
喋りながらではあるが、サッサッサッと機敏に足を動かして道を進んでいく一行。
その時、だった。
ガサッと近くの茂みが揺れた。
「ヒエッ!!な、何!?」
その音に善逸が飛び上がる。
善逸は耳が良い。
だから、常人にとっては微かな物音であっても、善逸にはとても大きな音のように聞こえるらしく、いつでもその反応は大げさであった。
「ゲヒッ、人間だぁ。たくさんいる」
「ぎゃあああっ!!おっ、鬼―っ!!!」
茂みの陰から現れた者に、善逸がまるで爆竹でも弾けたかのように叫び声をあげた。
その期待を裏切らない驚きっぷりに、鬼は嬉しそうに舌なめずりをする。
「お前ら全員、俺様が今から食ってやる」
善逸ほどではないにしても、須磨達も強ばった表情をして夫の宇髄の顔を思わず見上げた。
だが意外にも宇髄は、何事かを思いついた様にニヤリと笑みを浮かべていたのだった。
「丁度いい。おい善逸、あの鬼を倒してみろ。そうしたら特訓は終わりにしてやるよ。修了テストだ」
「えぇっ!!?なっ、何言ってんですかアンタ!!無理無理無理、絶対無理!!死ぬ!死んじゃうっ!!」