第11章 倒したのお前やで
今やすっかり片足の生活にも慣れ、温泉だろうが屋内の風呂であろうが一人で入浴することができるようになっていた。
煉獄家に引き取られていった日、縁側で足洗い用のタライに頭から突っ込みそうになっていたことが嘘のようである。
花が咲いたように華やかな女湯の、敷居を隔てた向こう側では、善逸が彼女達の笑い声に耳を澄ませながら思い切り宇髄に背を向けて湯につかっていた。
「何でおっさんと二人っきりで温泉に入らなきゃいけないんだよぉ~!俺だってあっちでキャッキャウフフしたい!!」
「おいおい善逸、この超絶色男の俺様を前にしていい態度だなァ。お前、俺様は男も惚れる男だぜ!?」
「うるっさいんですよおおお!!男の裸、しかもこんな筋肉ダルマの裸を見たって何も楽しくないんですよッ!!」
キイーッと声を上げ悔し涙を流す善逸の、コロコロとよく変わる百面相のような顔を見ながら宇髄は心底可笑しそうに笑うのだった。
宇髄が善逸を気に入っている理由。
それはそのド派手な髪の色もあったが、女の事となると相手が誰であろうと強気でズバズバ言ってくるその度胸であった。
時々発狂したように叫び声を上げるのはやかましいと思うが、もともと大きな目玉をさらに見開いて、充血させながらクワッと睨みつけてくる顔なんか最高に面白いと思っていた。
柱である自分にこんな態度を取ってくる奴は一人もいないので、からかいやすくてすごく楽しいのだ。